冬のつっぱり、本当の原因は? ― 「空気が乾燥するから」だけではなかった話
肌科学コラム

冬のつっぱり、本当の原因は? ― 「空気が乾燥するから」だけではなかった話

暖房の効いたオフィスで、午後になると頬や口のまわりがつっぱる。

乾燥しているのだと思って、水をこまめに飲んでいるのに、なかなか変わらない。

寒い日の夜、熱いお湯で顔を洗うとさっぱりして気持ちいい。それなのに、洗ったあとのほうがかえってつっぱる気がする。

鏡を見ると、口のまわりが白っぽく見える日もある。

そんな冬のつっぱり、「空気が乾燥しているから仕方ない」とあきらめていませんか。研究をのぞいてみると、意外な事実が見えてきます。

今回は、知っておきたい3つのポイントにしぼってご紹介します。読み終わるころには、今夜の洗顔と、夕食後の食器洗いが少し変わるかもしれません。

4コマ漫画の1コマ目。寒い日の夜、湯気の立つ洗面台で、ミナが洗顔料を手に出しながら「寒い日は、熱いお湯で洗顔するのが気持ちいいのよね〜」。
4コマ漫画の2コマ目。タオルを持ったミナが頬をさわって首をかしげ「…あれ?さっぱりしたのに、洗ったあとのほうがつっぱる」。
4コマ漫画の3コマ目。翌日のオフィスで、ハダ先輩がお湯に洗剤を溶かしてお皿の油汚れが落ちるイメージを示しながら「実は、『熱いお湯+洗浄成分』の組み合わせが、肌の負担になりやすいんだって」。ミナは驚いた表情。
4コマ漫画の4コマ目。その夜、ミナが洗面台の蛇口のレバーに手をかけ、穏やかな表情で「洗うお湯は、ぬるめに。まずは毎日の過ごし方からだね!」。

寒い日の洗顔、こんな経験ありませんか?

肌のいちばん外側には、うすい「壁」がある

肌のいちばん外側には、「角層(かくそう)」というとてもうすい層があります。体の中の水分が逃げるのを防ぎ、外からの刺激が入るのを防ぐ、いわば「壁」です[1]。

この壁は、レンガとセメントの塀によく似ています。

レンガにあたるのが「角質細胞」、すき間を埋めるセメントにあたるのが、セラミド・脂肪酸・コレステロールといった「脂質(ししつ)」[1]。レンガの中には、水を抱える「天然保湿因子(NMF)」が入っています[2]。

角層をレンガとセメントの塀にたとえたイラスト。「角質細胞=レンガ」「脂質=セメント」「NMF=スポンジ」の3つのラベルがある。レンガと、レンガの中のスポンジには、点の目と口のやさしい顔が描かれている。

角層は、レンガとセメントの塀のようなもの

角層が水分を保っていられるのは、セメントの役割をする脂質、水がまっすぐ通り抜けにくい曲がりくねった道すじ、そしてNMF、この3つのおかげだと考えられています[2]。どれかひとつが欠けても、壁は水分を守りにくくなります。

日本人15人を測った研究では、頬の角層は平均で約0.02mm。手のひらの約10分の1しかなかったと報告されています[3]。

顔の壁は、思っているよりずっとうすいのです。

頬の角層を表すうすいシートと、手のひらの角層を表す厚い板を並べたイラスト。「頬の角層 約0.02mm」「手のひらの角層 頬はこの約10分の1」と書かれている。

頬の角層は、手のひらの約10分の1のうすさ

湿度や気温が低い環境では、この壁の働きが全体的に落ちやすく、肌が刺激に敏感になりやすいことが報告されています[4]。ここまでが、よく知られている「冬の乾燥」の話です。

意外な事実① 冬は、壁の「材料」が減っていた

冬のつっぱりは、乾いた空気で肌の表面の水分が飛んでいくだけ。そう思っていませんか。

海外の研究では、冬に採取した角層は、春や夏に比べて、すき間を埋める脂質の量が大きく減っていたと報告されています。調べた顔・手・脚のどこでも、同じ傾向でした[5]。

冬の角層のイメージイラスト。雪の降る中、すき間のセメントがうすくなった塀で、レンガたちが少し疲れた表情をしている。そばには中身がほとんど残っていないセメントの袋が置かれている。

冬は、セメント(脂質)が少なくなりやすい季節

先ほどのレンガとセメントのたとえでいえば、冬は「セメントの袋が少なくなった工事現場」のようなもの。外の空気が乾いているうえに、壁を支える材料そのものが少なくなりやすい季節なのです。

冬に肌の調子がゆらぎやすいと感じるのは、こうした二重の理由があるからかもしれません。だからこそ冬は、壁にさらに負担をかけない過ごし方が大切になります。

意外な事実② お水をたくさん飲めば、うるおう?

肌が乾くと、「もっとお水を飲まなきゃ」と思いがちですよね。

水を多く飲むと肌のうるおいが増えるのか。これを調べた研究をまとめた論文では、条件に合う研究は6本しかなく、根拠は量・質ともに弱いと結論づけています[6]。

うるおいが少し増えたという結果も、おもに、ふだんあまり水を飲んでいなかった人で見られたものでした[6]。

水分補給は、体のためにとても大切です。

ただ、「根拠が弱い」と「意味がない」は違います。「効かない」と決まったわけではなく、「まだ十分に確かめられていない」ということ。

だからこそ、お水だけに頼らず、ほかの過ごし方も見直してみましょう。

意外な事実③ 負担になりやすいのは「熱いお湯+洗浄成分」

寒い日は、熱いお湯で洗いたくなりますよね。では、熱いお湯そのものが肌を乾かしているのでしょうか。

洗浄成分を溶かした液に腕をひたす実験では、40℃のほうが20℃より、肌から逃げる水分が増えたと報告されています。一方、水だけにひたした場合は、2日間で目立った変化はありませんでした[7]。

負担が大きくなりやすいのは、熱いお湯だけのときより、「熱いお湯」と「洗浄成分」が重なったときだったのです。

食器洗いの手にも、同じ組み合わせが

この実験で使われたのは、食器用洗剤などにも使われるタイプの、刺激の強い洗浄成分でした[7]。熱いお湯と洗剤での食器洗いは、手の肌にも負担になりやすいと考えられます。

寒い夜に熱めのシャワーを浴びながら体を洗う。湯船につかったあと、熱いお湯のまま顔を洗う。

冬にはごく自然なこうした習慣も、「熱いお湯+洗浄成分」が重なる場面です。

なお、「洗顔料が悪い」という意味ではありません。ポイントは、洗うときのお湯の温度です。

泡は多いほどいい、わけではない

たっぷりの泡で洗うと、しっかり落ちた気がしますよね。でも、泡は多ければ多いほどいい、というわけではありません。

米国皮膚科学会(AAD)は、汚れや皮脂を落とせるだけの量を使い、濃い泡が立つほどは使わないこと、そして洗浄料は必要なところにだけ使うことをすすめています[8]。

湯船の時間も、熱すぎず、長すぎず

湯船につかる時間は、冬の楽しみのひとつですよね。だからこそ、お湯は熱すぎず、長すぎず。

米国皮膚科学会(AAD)も、シャワーや入浴は5〜10分ほどにして、温かいお湯を使うことをすすめています[8]。

体を洗うときも、顔と同じくぬるめのお湯で。お風呂から上がったら、タオルでこすらず、やさしく押さえるように拭きましょう。

さっぱり感が少し物足りなく感じるかもしれません。でも、顔の壁は手のひらの約10分の1のうすさ。

まずは、洗うときのお湯だけでもぬるめに。そんな小さな切り替えから、冬の肌とのつき合い方を変えてみませんか。

気になる症状が続くときは、皮膚科に相談しましょう。

次回予告

次回は「塗るもの」の話。保湿剤には、実は3つの違う役割があります。

洗ったあと、いつ、どう塗るのがいいのでしょうか?冬の肌と上手につき合うためのヒントを、また一緒にのぞいていきましょう。

参考文献

[1] Proksch E, et al. The skin: an indispensable barrier. Exp Dermatol. 2008;17(12):1063-1072. doi:10.1111/j.1600-0625.2008.00786.x(PMID: 19043850)

[2] Rawlings AV, Harding CR. Moisturization and skin barrier function. Dermatol Ther. 2004;17 Suppl 1:43-48. doi:10.1111/j.1396-0296.2004.04s1005.x(PMID: 14728698)

[3] Egawa M, et al. In vivo estimation of stratum corneum thickness from water concentration profiles obtained with Raman spectroscopy. Acta Derm Venereol. 2007;87(1):4-8. doi:10.2340/00015555-0183(PMID: 17225007)

[4] Engebretsen KA, et al. The effect of environmental humidity and temperature on skin barrier function and dermatitis. J Eur Acad Dermatol Venereol. 2016;30(2):223-249. doi:10.1111/jdv.13301(PMID: 26449379)

[5] Rogers J, et al. Stratum corneum lipids: the effect of ageing and the seasons. Arch Dermatol Res. 1996;288(12):765-770. doi:10.1007/BF02505294(PMID: 8950457)

[6] Akdeniz M, et al. Does dietary fluid intake affect skin hydration in healthy humans? A systematic literature review. Skin Res Technol. 2018;24(3):459-465. doi:10.1111/srt.12454(PMID: 29392767)

[7] Ohlenschlaeger J, et al. Temperature dependency of skin susceptibility to water and detergents. Acta Derm Venereol. 1996;76(4):274-276. doi:10.2340/0001555576274276(PMID: 8869682)

[8] American Academy of Dermatology. Dermatologists' top tips for relieving dry skin. https://www.aad.org/public/everyday-care/skin-care-basics/dry/dermatologists-tips-relieve-dry-skin

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