
冬のつっぱり、本当の原因は? ― 「空気が乾燥するから」だけではなかった話
暖房の効いたオフィスで、午後になると頬や口のまわりがつっぱる。
乾燥しているのだと思って、水をこまめに飲んでいるのに、なかなか変わらない。
寒い日の夜、熱いお湯で顔を洗うとさっぱりして気持ちいい。それなのに、洗ったあとのほうがかえってつっぱる気がする。
鏡を見ると、口のまわりが白っぽく見える日もある。
そんな冬のつっぱり、「空気が乾燥しているから仕方ない」とあきらめていませんか。研究をのぞいてみると、意外な事実が見えてきます。
今回は、知っておきたい3つのポイントにしぼってご紹介します。読み終わるころには、今夜の洗顔と、夕食後の食器洗いが少し変わるかもしれません。




寒い日の洗顔、こんな経験ありませんか?
肌のいちばん外側には、うすい「壁」がある
肌のいちばん外側には、「角層(かくそう)」というとてもうすい層があります。体の中の水分が逃げるのを防ぎ、外からの刺激が入るのを防ぐ、いわば「壁」です[1]。
この壁は、レンガとセメントの塀によく似ています。
レンガにあたるのが「角質細胞」、すき間を埋めるセメントにあたるのが、セラミド・脂肪酸・コレステロールといった「脂質(ししつ)」[1]。レンガの中には、水を抱える「天然保湿因子(NMF)」が入っています[2]。

角層は、レンガとセメントの塀のようなもの
角層が水分を保っていられるのは、セメントの役割をする脂質、水がまっすぐ通り抜けにくい曲がりくねった道すじ、そしてNMF、この3つのおかげだと考えられています[2]。どれかひとつが欠けても、壁は水分を守りにくくなります。
日本人15人を測った研究では、頬の角層は平均で約0.02mm。手のひらの約10分の1しかなかったと報告されています[3]。
顔の壁は、思っているよりずっとうすいのです。

頬の角層は、手のひらの約10分の1のうすさ
湿度や気温が低い環境では、この壁の働きが全体的に落ちやすく、肌が刺激に敏感になりやすいことが報告されています[4]。ここまでが、よく知られている「冬の乾燥」の話です。
意外な事実① 冬は、壁の「材料」が減っていた
冬のつっぱりは、乾いた空気で肌の表面の水分が飛んでいくだけ。そう思っていませんか。
海外の研究では、冬に採取した角層は、春や夏に比べて、すき間を埋める脂質の量が大きく減っていたと報告されています。調べた顔・手・脚のどこでも、同じ傾向でした[5]。

冬は、セメント(脂質)が少なくなりやすい季節
先ほどのレンガとセメントのたとえでいえば、冬は「セメントの袋が少なくなった工事現場」のようなもの。外の空気が乾いているうえに、壁を支える材料そのものが少なくなりやすい季節なのです。
冬に肌の調子がゆらぎやすいと感じるのは、こうした二重の理由があるからかもしれません。だからこそ冬は、壁にさらに負担をかけない過ごし方が大切になります。
意外な事実② お水をたくさん飲めば、うるおう?
肌が乾くと、「もっとお水を飲まなきゃ」と思いがちですよね。
水を多く飲むと肌のうるおいが増えるのか。これを調べた研究をまとめた論文では、条件に合う研究は6本しかなく、根拠は量・質ともに弱いと結論づけています[6]。
うるおいが少し増えたという結果も、おもに、ふだんあまり水を飲んでいなかった人で見られたものでした[6]。
水分補給は、体のためにとても大切です。
ただ、「根拠が弱い」と「意味がない」は違います。「効かない」と決まったわけではなく、「まだ十分に確かめられていない」ということ。
だからこそ、お水だけに頼らず、ほかの過ごし方も見直してみましょう。
意外な事実③ 負担になりやすいのは「熱いお湯+洗浄成分」
寒い日は、熱いお湯で洗いたくなりますよね。では、熱いお湯そのものが肌を乾かしているのでしょうか。
洗浄成分を溶かした液に腕をひたす実験では、40℃のほうが20℃より、肌から逃げる水分が増えたと報告されています。一方、水だけにひたした場合は、2日間で目立った変化はありませんでした[7]。
負担が大きくなりやすいのは、熱いお湯だけのときより、「熱いお湯」と「洗浄成分」が重なったときだったのです。
食器洗いの手にも、同じ組み合わせが
この実験で使われたのは、食器用洗剤などにも使われるタイプの、刺激の強い洗浄成分でした[7]。熱いお湯と洗剤での食器洗いは、手の肌にも負担になりやすいと考えられます。
寒い夜に熱めのシャワーを浴びながら体を洗う。湯船につかったあと、熱いお湯のまま顔を洗う。
冬にはごく自然なこうした習慣も、「熱いお湯+洗浄成分」が重なる場面です。
なお、「洗顔料が悪い」という意味ではありません。ポイントは、洗うときのお湯の温度です。
泡は多いほどいい、わけではない
たっぷりの泡で洗うと、しっかり落ちた気がしますよね。でも、泡は多ければ多いほどいい、というわけではありません。
米国皮膚科学会(AAD)は、汚れや皮脂を落とせるだけの量を使い、濃い泡が立つほどは使わないこと、そして洗浄料は必要なところにだけ使うことをすすめています[8]。
湯船の時間も、熱すぎず、長すぎず
湯船につかる時間は、冬の楽しみのひとつですよね。だからこそ、お湯は熱すぎず、長すぎず。
米国皮膚科学会(AAD)も、シャワーや入浴は5〜10分ほどにして、温かいお湯を使うことをすすめています[8]。
体を洗うときも、顔と同じくぬるめのお湯で。お風呂から上がったら、タオルでこすらず、やさしく押さえるように拭きましょう。
さっぱり感が少し物足りなく感じるかもしれません。でも、顔の壁は手のひらの約10分の1のうすさ。
まずは、洗うときのお湯だけでもぬるめに。そんな小さな切り替えから、冬の肌とのつき合い方を変えてみませんか。
気になる症状が続くときは、皮膚科に相談しましょう。
次回予告
次回は「塗るもの」の話。保湿剤には、実は3つの違う役割があります。
洗ったあと、いつ、どう塗るのがいいのでしょうか?冬の肌と上手につき合うためのヒントを、また一緒にのぞいていきましょう。
参考文献
[1] Proksch E, et al. The skin: an indispensable barrier. Exp Dermatol. 2008;17(12):1063-1072. doi:10.1111/j.1600-0625.2008.00786.x(PMID: 19043850)
[2] Rawlings AV, Harding CR. Moisturization and skin barrier function. Dermatol Ther. 2004;17 Suppl 1:43-48. doi:10.1111/j.1396-0296.2004.04s1005.x(PMID: 14728698)
[3] Egawa M, et al. In vivo estimation of stratum corneum thickness from water concentration profiles obtained with Raman spectroscopy. Acta Derm Venereol. 2007;87(1):4-8. doi:10.2340/00015555-0183(PMID: 17225007)
[4] Engebretsen KA, et al. The effect of environmental humidity and temperature on skin barrier function and dermatitis. J Eur Acad Dermatol Venereol. 2016;30(2):223-249. doi:10.1111/jdv.13301(PMID: 26449379)
[5] Rogers J, et al. Stratum corneum lipids: the effect of ageing and the seasons. Arch Dermatol Res. 1996;288(12):765-770. doi:10.1007/BF02505294(PMID: 8950457)
[6] Akdeniz M, et al. Does dietary fluid intake affect skin hydration in healthy humans? A systematic literature review. Skin Res Technol. 2018;24(3):459-465. doi:10.1111/srt.12454(PMID: 29392767)
[7] Ohlenschlaeger J, et al. Temperature dependency of skin susceptibility to water and detergents. Acta Derm Venereol. 1996;76(4):274-276. doi:10.2340/0001555576274276(PMID: 8869682)
[8] American Academy of Dermatology. Dermatologists' top tips for relieving dry skin. https://www.aad.org/public/everyday-care/skin-care-basics/dry/dermatologists-tips-relieve-dry-skin