
【日焼け止め入門 特集1】「吸収剤」と「散乱剤」、何が違う? ― SPF・PAの数字だけで選ぶと見落とすこと
秋晴れの週末、ドラッグストアの日焼け止めの棚の前で、しばらく迷ってしまう。
手には、数字の違う日焼け止めが2本。
「数字が大きいほうが、きっとしっかり守ってくれるはず」。そう思いながらも、決めきれない。
夏が終わっても、晴れた日に出かけるときは、日焼け止めを使っている。
でも、朝はいつも時間がない。手に取った分をさっとのばして、それで終わりにしている。
箱の裏を見ると、「紫外線吸収剤」「紫外線散乱剤」という言葉も書いてある。
何が違うのかは、よくわからない。
1話では、熱いお湯と洗浄成分の組み合わせについてお話ししました。2話では、保湿剤の3つの役割をご紹介しました。
今回は、季節を問わず使う「日焼け止め」の話です。数字の意味と、2つのタイプの違いを見ていきます。




日焼け止めの数字、気になったことはありませんか?
よく聞く、日焼け止めの「常識」
SPFの数字が大きいほど、紫外線をしっかり防いでくれる。
塗り直しは、汗をかいたときや、何時間かたってからするもの。
どちらも、よく聞く話です。そして、どちらも半分は正しい話です。
数字の意味を知ると、日焼け止めの見え方が少し変わります。まずは、SPFとPAが何を表しているのかを見てみましょう。
SPFとPA、数字が表しているもの
SPFは、おもにUV-Bという紫外線に対する目安です。
日焼け止めを塗った部分と塗らなかった部分で、肌がほんのり赤くなるまでに必要な紫外線の量を比べて、数字を出します。
PAは、もうひとつの紫外線、UV-Aに対する目安です。「+」の数で、4つの段階に分かれています。
PAは、UV-Aを浴びたあと、肌が黒っぽくなって長く残る反応をもとに測ります。
2つの紫外線の違いを、表にまとめました。
UV-B | UV-A |
|---|---|
地表に届く量 | |
オゾン層などでさえぎられ、一部が届く | その多くが地表に届く |
肌への影響 | |
日焼けを起こす | 肌の色を黒くする。UV-Bより影響は小さいが、長い時間あたると肌などに影響があることが懸念されている |
目安になる表示 | |
SPF | PA |
表示を決める反応 | |
肌がほんのり赤くなる反応 | 肌が黒っぽくなって長く残る反応 |
出典:環境省「紫外線環境保健マニュアル2020」の記載と、日本化粧品工業連合会のSPF・UVA測定法基準より。
日本の表示では、SPFは「50+」、PAは「++++」が、いちばん上の段階です。
SPFは、50を超える数字を細かく書かず、「50+」とまとめて表示するきまりになっています。
ここまでは、パッケージを見ればわかることです。
大切なのは、この数字が「どんな条件で」測られたのか、という点です。
意外な事実① その数字は、「決められた量」を塗ったときの値
SPFやPAは、肌1cm²あたり2mgの日焼け止めを塗って測った数値です。
数字は、この量を塗ったときに、はじめてその値になります。
では、私たちはふだん、どのくらいの量を塗っているのでしょうか。
ヨーロッパの18〜24歳の大学生124人が、実際に塗った量を調べた研究があります。
その研究では、塗った量の中央値は、1cm²あたり0.39mgだったと報告されています。
中央値とは、塗った量を少ない順に並べたとき、ちょうど真ん中にくる人の値です。
この研究では、男女や日焼けのしやすさ、SPFの数字による違いは見られなかったと報告されています。
日本の研究でも、ふだんどおりに塗った量は、1cm²あたり約1mgだったと報告されています。
いくつもの研究をまとめた総説でも、実際に塗る量は、測るときの量より少ないことが多いと整理されています。
そして、塗る量を減らして測った研究では、どれも、実際のSPFが表示より低くなったと報告されています。
どのくらい低くなるかは、研究によって計算のしかたが違います。ひとつの式で言えるものではありません。
料理のレシピの味は、書かれた分量どおりに作ったときの味です。SPFの数字も、少しそれに似ています。
「数字が大きいほど防ぐ」は、決められた量を塗ったときの話です。
数字を比べる前に、まずは「自分はどのくらい塗っているかな?」と思い出してみてください。
意外な事実② 塗り直しは、「最初にもう一度」から
塗り直しというと、汗をかいたあとや、何時間かたってからするもの。そんなイメージがあるかもしれません。
環境省のマニュアルでも、手や衣類にふれたり、汗をタオルでふいたりすると落ちてしまうため、2〜3時間おきの塗り直しがすすめられています。
これは、とても大切な習慣です。そのうえで、もうひとつ知っておきたいタイミングがあります。
同じマニュアルには、「日焼け止めは、戸外に出る前に塗りましょう」とも書かれています。
塗る量の研究をまとめた海外の総説には、「外に出る前に塗り、1時間以内にもう一度塗る」という提案があります。
早めにもう一度塗り重ねると、測るときの量と実際に塗る量の差を、ある程度カバーできるかもしれない、という考え方です。
日本の研究でも、「2回塗る」ように伝えると、塗った量が1cm²あたり2mgに近づいたと報告されています。
「2〜3時間おき」をやめよう、という話ではありません。
その前に、最初の「もう一度」を加えてみよう、という話です。
「吸収剤」と「散乱剤」、2つのタイプ
日焼け止めの紫外線を防ぐ成分は、「紫外線吸収剤(有機系)」と「紫外線散乱剤(無機系)」の2つに分けられます。
紫外線吸収剤を使っていない製品に、「ノンケミカル」と表示されていることがあります。
環境省のマニュアルには、「日焼け止めには数種類が組み合わされて入っています」と書かれています。
同じマニュアルには、2つのタイプの特徴が書かれています。表にまとめると、次のとおりです。
紫外線吸収剤タイプ | 紫外線散乱剤タイプ |
|---|---|
よいところ | |
塗った際に皮膚が白く見えない | アレルギーをおこすことがほとんどない |
気をつけたいところ | |
まれにアレルギー反応をおこす人がいる | 少々白く見える |
出典:環境省「紫外線環境保健マニュアル2020」の記載より。日本皮膚科学会「皮膚科Q&A」も参考にしました。
どちらのタイプでも、量と塗り直しが大切です。
顔に塗るときは、同じ量をもう一度
では、毎日の塗り方を見てみましょう。
環境省のマニュアルでは、顔に塗るとき、一円玉を置いたくらいの面積が埋まる量を手のひらに取り、2回塗る方法が紹介されています。
手のひらに取った分を、額、鼻の上、両頬、あごに分けて置きます。そこから、まんべんなく塗りのばします。
そのあと、もう一度同じ量を重ねます。

一度塗ったあと、同じ量をもう一度
鼻の頭など、日ざしが当たりやすいところは、念入りに塗ります。
別の目安として、日本皮膚科学会のQ&Aには、「顔ですと真珠の玉2個分位を全体にのばします」「3時間に1回くらい塗り替えるほうが確実です」と書かれています。
朝のひと手間が、少し増えるだけです。
まとめ
SPFやPAの数字は、決められた量を塗ったときの値でした。
塗り直しは、「何時間かたってから」だけでなく、「最初にもう一度」も大切です。
2つのタイプには、それぞれによいところと、気をつけたいところがあります。
数字の大きさだけでなく、塗る量とタイミングにも目を向けると、いつもの日焼け止めが少し違って見えてくるはずです。
明日の朝は、いつもの量をのばしたあと、もう一度だけ重ねてみませんか。
気になる症状が続くときは、皮膚科に相談しましょう。
次回予告
次回も、毎日の過ごし方を少し変えることで、もっときれいになれるヒントをお届けします。特に、冬に向かう季節の変わり目に、肌を守るためにできることを、一緒に見ていきましょう。
参考
環境省「紫外線環境保健マニュアル2020」、日本化粧品工業連合会のSPF・UVA測定法基準、日本皮膚科学会「皮膚科Q&A」をもとに、編集部でまとめました。塗る量については、国内外の研究論文と総説も参考にしました。